ラヴ・アフェアズ

JAIHOで配信中のエマニュエル・ムレ監督『ラヴ・アフェアズ』(2020年)を見た。

 

不勉強なもので、私はこの監督のことは全然知らなくて、フランスでは軽妙な恋愛コメディの名手として「エリック・ロメールの後継者」「フランスのウディ・アレン」なんて呼ばれてる人だそう。

私はロメールやアレンを論じるほど詳しくはないので、後継者かどうかは置いとくとして、確かに面白くは見たんだけど、軽妙どころかそもそもコメディなんだろうか、と考え込んでしまった。

最初は、男女(ニールス・シュネデールとカメリア・ジョルダナ)それぞれの恋愛話が語られ、男女それぞれが恋愛に翻弄させられる様が描かれる。特に男の方の振り回され続けるあたりは演じる役者さんの良さもあって、まあコメディかなと思う。

しかし、その男女が互いに意識をし始めるあたりから、映画はどこか不穏な空気が漂ってきて、コメディというよりかは、どこか陰惨さを感じてきてしまう……のは私だけだろうか。

勿論、その陰惨さを楽しんで見ていた訳だが、特に印象深かったのはその女の相手の男(ヴァンサン・マケーニュ)と元妻(エミリー・ドゥケンヌ)とのくだりで、元妻の会話と表情から織りなす悟りのような感じと、それを増幅するような光の捉え方(あれ、絶対わざとやってるな)とか、もしこの映画がコスチュームプレイだったら修道院に行ってそうだなとか、切ないだけにチョット怖かったです。ちなみに元妻を演じたエミリー・ドゥケンヌ、見ているうちにダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』の頃を思い出して、時の流れと無常を感じひとりしみじみしました。

 

とまあ面白くは見たのだけど、同時に不満もあって、それはきっちり描いてみせた分、どこか窮屈な印象も抱いてしまった点。映画としての語り方以外にも、例えばシネスコの画面とか、既成曲の使い方とか、きっちりしすぎて却って余裕さを感じられなかった……というのは贅沢な言いがかりだろうか。