ぽんこつ

なんか急に、無性に見たくなって、U-NEXTから瀬川昌治監督『ぽんこつ』(1960年)を見た。

実は去年の今頃、U-NEXTで配信が開始されてすぐに見ていたので、それ以来となる再見。でもなんで急に、無性に見たくなったんだろう。まあ、時間が短いというのもあったと思う(なんとたったの81分!)。翌日早出だったしね(笑)。

それにしても、やっぱり面白い。

瀬川監督のデビュー作にあたるのだが、ハッキリ言って「やりたい放題」やってる感が凄くて。冒頭、自動車ブームに乗って事故が多発…というナレーションに、次々と自動車が突っ込んで事故、事故、さらに事故!という、今なら非常に不謹慎な悪ノリオープニングからしてそうなのだが、「リアリズム」の世界ではなくて完全に「喜劇」の世界なんですね。

だから冷静に考えたら、自動車解体屋…所謂「ぽんこつ屋」で働く青年と女子大生との身分違い(?)の恋愛なんて、格差や周囲の軋轢や壁に苛まれたりしそうな、色んな意味での「リアリズム」が描かれるシリアスな映画を想像しそうだが、そんな風情はほぼゼロ。むしろ出てくる人達がみんな多かれ少なかれ「ファニー (FUNNY)」な人々ばかりなので、真面目に考えたら嫌みになりかねない遣り取りでも、全然嫌みにならず、寧ろ可笑しさへと昇華(?)されていた。そして、二人の恋愛の紆余曲折を、一緒に走り回ったり、何かに妨げられ離れてしまったり、追いかけていったりといった、一種の「動き」=「アクション」によって表現していくあたりもいいし、なにより江原真二郎佐久間良子のふたりがいい。特に江原真二郎は最初見たときも思ったけど、滅茶苦茶チャーミングなのでビックリ。

あと、この青年と女子大生とが知り合うきっかけとなる、女子大生の卒論製作のくだりがそのまま映画製作ギャグになっていて、これが今見ても良く出来ていて可笑しい。ふと去年の京都国際映画祭のオンライン上映で見た無声映画キートンのカメラマン』を思い出したりもした。

 

この映画、実は阿川弘之の小説が原作で(ちくま文庫から復刻で出ているらしい)、私はまだ手に入れておらず、当然読んでもいないのだが、ぜひ読んでみたいと思った。ていうか、原作小説と映画と、どこらへんが同じで、どこらへんが違うのか、そこに興味が沸いてきたのだ。読んでないから憶測でしかないが、たぶんテイスト自体が全然違うような気がするんだけど…………果たしてどうだろうか?