イサドラの子どもたち

この監督の映画、『パーク』は好きだったけど、『泳ぎすぎた夜』は実はちょっとピンとこなかったので、正直今回はどうなんだろう? でも、結構評判は良いよねえ…と気にはなっていた。

とはいえ、私はダンスに関しては全くの門外漢だからなあ。

イサドラ・ダンカンについても、彼女の功績より、黒柳徹子さんが亡くなられた森光子さんへの弔辞で語ったエピソード(不謹慎と思いつつ爆笑してしまう)で知ってるという程度だし(おいおい)。

 

そんな感じで、U-NEXTにめでたくダミアン・マニヴェル監督『イサドラの子どもたち』(2019年)が入ってたので、漸く見た。

まずイサドラ・ダンカンのことを知らなくても、ある程度のことは映画の中で説明してくれるし、自伝の朗読もある。そしてイサドラ・ダンカン「母」というダンスを軸に4人の女性たちのそれぞれの姿が描かれるという「仕組み」も、見ているうちにちゃんと分かってくる。ダンスは門外漢の私でも、すんなりと(?)作品の世界に入っていくことが出来て安心した。

面白かったのは、女性たちはイサドラの「母」という共通点はあるが、イサドラの言葉や「母」というダンスとの向き合い方はそれぞれに違っていて、にも関わらず、画面からは共通する何かが見出せたり、どこか呼応しあうようにも見えてくることだ。特に最後に登場する女性のくだりは、その見せ方も含めてとても感動的だった。

 

迎春閣之風波

昨日はJAIHOでキン・フー監督『迎春閣之風波』(1973年)を見た。

最高だった。1時間45分。全然飽きなかった。

最初こそ、物語の基本となる状況設定がナレーションで語られ、それこそ「なんのこっちゃ」と昔の中国について心の底から疎い者としては聞いてるだけで精一杯という感じなのだが、どうやらその国の最高権力者と、それに対する革命軍みたいなのがいて、その革命軍の戦略図が裏切り者によって権力者の手に渡ろうとしていて、なんとかそれを阻止し、更には……と、物語の今後というか目的が冒頭で分かると(ネタバレちゃうよ、ホントにそう語るのだから)、あとはもう何も考えずに、物事の推移を見守ればそれで良し(?)という、その簡潔さに畏れ入ってしまった。

例えば普通だったら、その革命軍のなかの人物がどういう理由で今があるのか、といった背景もある程度は描かれて、そこに見ている側も何か相通じるモノを感じたりするはずだ。しかし、ここでは4人の女の給仕に関してほんの少し女主人の会話の中で語られはするのだが、ストイックなまでに深入りせずに物語はすすむ。だから給仕たちの背景を詳しくは見る側には分からない。分からないが、繁盛している迎春閣での彼女たちの仕事ぶり(真の目的、行動は既に始まっている!)を見ていると、彼女の背景から来る様々な感情が滲み出てくるように伝わってくるし、それらには必ずといって良いほど視線や体を使ったアクションが伴っている。この見せ方が凄い。

で、これがあるからこそ、終盤へのアクションが非常に効いていると思う。少なくとも、私はあの終盤は決して取って引っ付けたような印象にはならず、むしろ妙に感動してしまった。