ラ・ファミリア

一昨年の京都ドーナッツクラブの「イタリア名優列伝 ちょいワル篇」という特集上映で『あんなに愛しあったのに』と『スプレンドール』を、去年はDVDを購入して『特別な一日』を。と、日本での劇場公開のリアルタイムではそんなに興味もなかったのに(だって子供だったもん、しょうがないじゃ~ん)、イタリアのエットレ・スコーラ監督(昔はエットーレ・スコラと呼んでましたよね)に興味を持って、ああ、他のスコーラの映画もなんか見られないかなあ…と思っていたら、突然U-NEXTの見放題配信で未見だった『ラ・ファミリア』が入ったので驚いた……のが去年の暮れ。いつ見よう、いつ見ようと思いながら、すぐには見ないという悪いクセがついてしまっていた。

で、漸く見ました。U-NEXTの見放題配信にて、エットレ・スコーラ監督『ラ・ファミリア』(1987年)。

(以下、ネタはばらしてないつもりですが、真っさらな気持ちで見ようと思う人は、見た後で読むのを推奨します)

簡単に言うと、ある男の80年の人生を、外には出ずにあくまでも住処である家の中だけを舞台にして描くというもの。舞台となる空間の限定性という点では、ある意味『特別な一日』を更に突き詰めた印象があって(名作と誉れ高い『ル・バル』は未見)、リアル志向な今時の人なら「それは無理あるやろ」と思うかもしれないが、例えばあの長い廊下、舞台だったらさしずめ花道かという感じか。そして走馬燈のように流れていく主人公の記憶の数々は、まずはこの長い廊下を歩くことで始まっているようにも見えるほどで、この空間造形だけでもため息が出るほどだった。この記憶のひとつひとつが舞台劇の一幕ごとに見ている感じだし、更に各パートの時代の空気が、台詞やディティールを駆使して描かれていて、「説明的ではないのか?」という人もいそうだけど、映画は主人公や他の人々のそれぞれの人生を描きつつ、周辺の歴史や政治・社会というものやその変容をも見事に掬い取っていて、もしかしたらこの映画のもうひとつのテーマなのではと思えてしまう。

もうひとつ面白かったのは、実はこの主人公の男、一応それなりに幸せそうな人生を送っているようにも見えるのだが、だからといって「自慢話」というのではなく、むしろ「ままならないこと」の繰り返しであったという点。あまりにままならないので癇癪を起こしてしまうので、中には「なにこれ、嫌なオッサンじゃ~ん!」と思う人が出てくるかもしれない(主人公を演じるのがヴィットリオ・ガスマンに変わってからは特に)。コレに関しては私も何度もそう思ったので否定しない(笑)。でも、この映画はそれらを決してジャッジせずに、ままならないのもまた人生とばかりに淡々と見つめ続ける、その姿勢が私には良かった。

大人になった孫が、あそこの家の唯一の後継者だからなのか凄い爺ちゃん孝行なんで偉いなあ~と思っていたら……あら!? という場面が最後にあって、ああ~そういうことだったのね、と(笑)。でも、それもまた良し、なのだった。