エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

出かけづらい…と標榜している日記だが、それでも、そろそろ、いいんじゃないか、出かけない訳じゃないもんね、ということで、久しぶりにシネコンで映画を見た。

ダニエル・クワンダニエル・シャイナート(通称ダニエルズ)監督『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022年)。

話題のアカデミー賞を席巻した映画です。

実はそこのシネコンアカデミー賞受賞の時点ではまだ1日3回上映していたのに、次の週から1日1回しかもレイトショーのみという扱いになることが分かり、いくら地方のシネコン、いくら『シン・仮面ライダー』や『わたしの幸せな結婚』が始まるとはいえ、せっかく話題になっているのにこの扱いはないよなあ、と憤慨しておりました。

そのこともあって、1日3回上映をしているうちに(それでもレイトショーの回だったんですが)見に行ったのです。同じ時間帯に『フェイブルマンズ』もやってて、正直迷ったんだけど。

 

まず見終わって思ったのは、よくぞアカデミー賞を取ったなあ、スゲえ~(笑)ということ。

とにかくマルチバース描写の過剰さには圧倒させられたし、見る側の余裕がないままにパパパパパ~~~~ッッッ!!!と展開する、いや、させられている感じは、「つ、ついていけない…」となる人も、そりゃあ出てくるでしょうよ。

それ以上に凄いのが、何かとんでもないことをしてバースジャンプが可能になる設定(これで合ってますよね?)で、これが物凄いことになっていて、アカデミー賞受賞の映画なのにあんなお下劣なギャグが出てくるなんて………と思いつつ笑ったし、もしアメリカ人で満員の映画館で見ていたら大爆笑で大盛り上がりになるのかな~? それは是非とも体験してみたいかも(笑)と思ったり。

でもこの映画がそれで終わらないのは、現実世界の登場人物にドラマがきちんと存在していること、それにどのキャラクターもそれぞれに抱えている事が「切実なもの」としてきちんと描かれていること、そこが最終的に非常に印象に残るんですね。しかも、例えばソーセージ指の人々のくだりなど、一見するとバカバカしくも感じるマルチバースの描写が、いつの間にか現実世界とに繋がって妙に感動的になるし。

その意味では現実の状況に思い悩む娘とマルチバース最強の敵というふたつの難役を見事に繋げて演じきったステファニー・シューが評価されるのは当然で、オスカーを受賞してもおかしくなかったと思う(勿論、ジェイミー・リー・カーティスの怪演も、ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クワンも良かったんだけど)。

 

むかし『スイス・アーミー・マン』を見たとき、この作り手の人はヘンなことやってるけど意外と根は真面目かも?と思ったのだが、今回の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を見て、その印象がますます良い意味で強固なものとなったのでした。