湖の見知らぬ男

チョット前にJAIHOでアラン・ギロディ監督『ノーバディーズ・ヒーロー』(2022年)を見ていたのだが、うーむ、期待が大きすぎたのか、正直あんまり乗れなかった(これならカンタン・デュピューあたりに撮って貰った方が良かったんじゃないかと思ったのは……私だけだろうな)。

まあ、私はギロディの映画は『湖の見知らぬ男』と『キング・オブ・エスケープ』しか見ていないので、まだまだギロディの映画そのものを理解できていないのかも…と思い、他の作品(見た人からは面白いと聞いている『垂直のままで』など)をどこかでやらないかなあと思う(まあ、してくれるとしたら、今の現状ではJAIHOあたりの配信しかないだろうか。そもそも日本でのギロディ作品は映画祭や特集上映でかかる程度で、配給が付いての劇場公開作はまだない)。

とまあ、そんな不完全燃焼のなかで、やはりJAIHOで配信中のアラン・ギロディ監督『湖の見知らぬ男』(2013年)を再見。これは以前カイエ週間だったかで日本でも見られる機会があって、私は京都シネマで見ていた。

いやー。やっぱり面白かった。まず、どこか世間から隔離されたような湖、そこに集まってくるゲイの男たちのくつろぎ具合や視線などが相俟って、独特の空間造形、独特の雰囲気が醸し出されていて、再見してもやっぱりそこがいいですねー。

で、最初は主人公が相手を見つけようと躍起になったりと、そういう恋人を求めてのやりとりが描かれているのだけど、そのうち徐々に主人公と他の男たちとの間に考えや感情のズレが露わになって、そこに殺人事件も絡んできたりして、心理的にどんどん追い込まれていく様は、初見時よりもグイグイ引き込まれた。

そしてなにより今回の再見で一番印象深かったのはラストシーンで、考えたら画面的にはよくあんな撮影するなあと思うのだが、同時に「引き裂かれる心、それ故の虚しさ」が画面からドーンと迫ってきて、初見時よりも強い印象だったので自分でもちょっと動揺してしまった。